《ロシアを敵視し、ウクライナ問題を陰険に引き起こした米国。米国は大東亜戦争に続き、再び大きな過ちを繰り返している。プーチン大統領は「世界は新しい秩序を必要としている」と世界に訴えている。》

プーチン大統領は、国際社会に対して紛争を防止する為、「新たな世界秩序を構築」するように呼びかけると共に、今日の諸問題の責任は、主に米国にあると主張している。プーチン氏は「米国の政策の所為で、世界の安全保障システムは崩壊するに至り、中東諸国およびウクライナで政変が相次いだ」という。実際、ウクライナ問題は米国の関与が問題を拡大させた。

プーチン氏は、ロシアの立場が不変である事を確認し、山積した問題の解決をする為に西側に対話を呼びかけた。2014年10月24日、黒海沿岸の保養地ソチで、世界数箇国からロシア研究家が集う「バルダイ国際会議」が開かれ、その会場でプーチン氏は、世界の安全保障システムを崩壊させたとして米国を非難し、優先課題として、世界および各国内の紛争を防止する為の「新たな国際関係の構築」を挙げた。

この意見が米国の気にいる筈がない。私見だが、理はプーチン氏にあると思うのだが、「戦後世界秩序」の旨味に拘る米国にはどうしても受け容れられないだろう。中共が提案する「新型二大国関係」が米国の「戦後世界秩序」と相容れないのに、これには米国は意外なほど寛容であるのは、大きな矛盾と言わざるを得ない。(昔から米国は「支那」には大いなる幻想を抱く傾向があった)

プーチン氏率いるロシアは、経済制裁やウクライナを巡る西側諸国との対立にも関わらず、外交的に孤立するつもりは更々なく、対話と経済関係の正常化に向けて開かれた立場をとっている。そして、米国が齎した苦境を乗り切る為に、覇権主義丸出しの中共とも手を結んだ。またロシアは核軍縮についても米国と突っ込んだ話し合いを行なう用意があるとのメッセージを発し続けている。 

併し、不自然なほど突如として浮上した「IS問題」(イスラム国問題)が、プーチン氏の呼びかけの声を掻き消してしまった。国際社会の耳目が「IS問題」に釘付けになっている間も、米国・EU・(そして止むを得ず追随した)日本、などのロシア制裁は続いている。米国のプーチン氏への敵愾心と経済制裁はかなり本気である。〈中共による行動を伴なった南シナ海全体の領有宣言〉と〈ロシアによるクリミア半島領有〉は米国にとっては重大性が全く異なり〈クリミア問題〉の方が我慢ならないらしい。米国ほど正義を叫ぶ欺瞞に満ちた国は無い。

プーチン氏は経済制裁や脅迫に屈しない立場で一貫している。プーチン氏は、一極支配の世界構造は、もはや覇権国家 米国には持ち堪えられない事が明らかになったと思っている。今や誰の目にも米国の凋落は明らかである。気紛れで不安定な一極システムの支配構造は、地域紛争、テロ、麻薬売買、過激主義、ショービニズム*、ナショナリズムなどの脅威に対し無力である事を曝け出している。本質的に一極世界構造とは、他者と他国に対する独裁主義を容認するものであるからだ。

(*ショービニスムとは、愛国主義ないしナショナリズムの極端なもの。自国を実像以上に誇るとともに、他国に対する攻撃的な姿勢を示す。一般に排外主義と訳される)

世界および地域の現在の安全保障システムが、大きな衝撃に耐えられる保証はないと、プーチン氏は考えている。嘗ては、諸大国のゲームと行動のルールを定める新たな世界秩序というものは、WW2の結果として構築・完成された。戦勝国を目指す国がヤルタで密約し、ポツダムで談合して、国境の不可侵、民族自決、国際連合(正しくは、ただの連合国)創設などの相互関係の新ルールを勝手に決めた。

ところが、現在、新システムの必要性は嘗てないほど高まっているのに、世界秩序を変更、決定するような大戦争は起きていない。冷戦は終わったが、平和条約が結ばれた訳ではないし、相互主義の原則で合意をみた訳でもない。そういうルールを構築せねばならないのに、どうやったら新世界秩序が決められるのか誰も興味を示さない。特に米国はロシアを政治的に敵視している。そして、本質的に常に中共に対しては寛容である。

ウクライナ東部の停戦の後の「ミュンヘン演説」(2007年)のプーチン氏は米国の政策に抗議しただけだった。ところが今やロシアは、ウクライナとシリアでの米国の政策に積極的に対決している。米国がプーチン氏を憎み、本気で追い落としを企てる所以だ。

プーチン氏の主眼は、一極世界がロシアの国益を考慮していないという事、そしてロシアは枢要な問題では自国の立場を守るという事に尽きる。これについては、日本こそロシアを見習うべきところである。米国は同じ誤ちを何度でも繰り返す癖がある。米国はここぞという時に「正邪を見分ける力」を持っていない。歴史的に、今までも、これからも、国際金融資本の意のままである。

ロシアは自ら覇権国家になるつもりも、世界の運命の決定者になるつもりもないが、自国の国益は守り抜くつもりだ。この考えには日本こそ同調したいところである。プーチン氏はソチでの演説で、現在、大国の関わる(直接でなくとも間接的に関与する)新たな地域紛争の可能性が高まっていると警告した。

その際、リスク要因になるのは、伝統的な国家間の対立だけではなく、個々の国の内部に於ける不安定さでもある。特に、大国との地政学的利害が交錯する国が問題を起こす。

プーチン氏によれば、ウクライナは正にこうした性格をもつ紛争地帯になってしまった。ロシアは、ウクライナによるEUとの連合協定調印という裏取引が拙速で不誠実で不確定であり、それが、最大の経済上のパートナーである筈のロシアを始めとした国々にとって深刻な危険を孕んでいる事を指摘し続けてきた。

併し、ロシアの意見には洟も引っかけられなかった。全く無視されたのだ。それで、困難ではあるが、本来求めたまともな文明国の対話の代わりに、事態のクーデター化を看過した。国をカオスの状態にし、経済と社会制度を破壊し、巨大な犠牲を伴う内戦の渦に引き込む道を止むを得ず選択した。

そもそもウクライナ危機は、米国が、ロシア敵視策の一環として扇動して起こしたものである。2014年初め、ビクトリア・ヌーランド国務次官補ら米国の外交官たちが、親露的だった当時のヤヌコビッチ政権を倒す極右勢力の政治運動に加勢してウクライナの政権を親露から反露に転換した。反露新政権がウクライナ東部のロシア系国民を抑圧し始めたので、ロシア系住民はウクライナからの分離独立を要求して内戦になったが、米国は卑劣にもそれをロシアの所為にした。
 
旧ソ連であった東欧諸国で「カラー革命」を嗾(けしか)けた者達は、結果を全く考慮していなかった。東西ドイツの統一を認めれば、NATOは東側に拡大しないという、国家間の約束事を信じ、裏切られ続けた経験を識るプーチン氏が、我慢に我慢を重ねてきた事を日本のマスメディアは全く報道しない。在日韓国朝鮮人一派と手を組んで売国に邁進する日本のマスメディアには理解できなかったのかも知れない。

プーチン氏の主張の骨子は、もはやロシアは90年代のように振舞う、つまり西側諸国の過ちに目を瞑る事はできないという点にある。以前ロシアは、西側は善なる力であり、幾つかのミスは見逃してもいいとの前提に立っていた。意外にもロシア正教は性善説の立場をとっている。ところがウクライナ問題発生時は、ロシアの安全そのものが脅威に晒されていた。

プーチン氏は礼を失わない真っ当な対話の可能性は、ブッシュの時代で終わったと思っている。その最初のシグナルが2008年の南オセチア紛争だった。とはいえ、プーチン氏の「世界の新秩序構築」への呼びかけは、インド、ブラジル、南アフリカなど、やはり米国の政策で安全が脅かされている国々でなら、傾聴される可能性があるだろう。日本も行動を伴なう事は慎重にするべきだが、プーチン氏の主張には注意を払うべきだ。

プーチン氏の意見には、日本人である私も賛成したい。今、世界には「正しい新秩序」が必要である。そのメンバーに相応しい国と地域は、「米国・英国・フランス・ドイツ・ロシア・中共・インド・ブラジル・日本」である。この9箇国で構成され、合議される「新世界秩序」が、これからの世界経済の安定と平和の根幹となる筈である。併し、間違っても上記9箇国に国連安保理常任理事国に与えられている「拒否権」の様な特権を与えてはならない。また、「正しい新秩序」を実現する為には、日本には越えるべき大きなハードルがある。米国の属国から真の主権国家へと脱却する事である。

プーチン氏はこれからのロシアに必要なのは「西欧的文明化とスラブ系民族主義の有機的結合によるロシア的産業化」であると固く信じている。そして日本に助力を求めている。利用しようとしていると言い換えてもいい。果たして日本の安倍首相はこの難題を乗り切れるだろうか。ロシアはグローバル化など決して求めてはいない。日本もグローバル化され尽くしてはいけない。その点で日露の利害は一致していると考えるべきだ。プーチン氏の真の求めに応じられるのは、恐らく日本だけである。日露両国は「反グローバリズム」で強固な協力関係を築く事ができるだろう。

2007年2月の「ナイ、アーミテージ報告」の裏で、日本の属国化継続宣言とも受け取れるレポートが出された。レポートは日本が選択するかも知れない3つの可能性に言及している。1、中共への接近。2、日米同盟の深化(更なる属国化)3、自主防衛選択(米国からの独立)である。日本が3を選択した場合は、隣国(中共・韓国)を使って徹底的に妨害するとしている。こういう重要な情報も日本のマスメディアは報道しない。日本国民は、米国に気を許し過ぎてはいけない。この点で、私は安倍首相に対する不安を拭い切れない。安倍首相は米国に忠実過ぎる嫌いがあるからだ。

米国への感情的反発はさて置いて、「ナイ、アーミテージ報告」は、尖閣・竹島には言及はしているが、北方四島には一言も触れていない。彼等は北方領土交渉の前進など想定していないのだ。ロシアが窮地に立たされている今、プーチンのシグナルを正確に受け取り、それに応える事ができれば、北方領土の一部返還も夢ではない。外交交渉、特に領土交渉には満額回答は有り得ない。南樺太・千島列島・ウルップ島まで返還要求していればともかく、一貫して北方四島だけを要求してきた以上、四島返還は有り得ない。プーチン氏が譲歩した「ヒキワケ」の意味を塾考するべきだろう。ロシアとの領土返還交渉という難関を乗り切れば、日本は真の自主独立に一歩も二歩も前進できる。

私は安倍首相に対しては常に是々非々で評価している為、時に強烈な反安倍の立場をとる事もあるが、ロシアとの領土返還交渉に関して言えば、是非この「夢」を託したいと思っている。その「夢」とは、我が国の真の自主独立への道を拓く事である。北方領土返還交渉を通じてロシアとの平和友好条約締結に成功すれば、「日本の自主独立」の為に大きな第一歩を踏み出す事になる。日本が自主独立国家に脱皮してこそ、米国とも〈対等な真の友好関係〉が築けるというものだ。