《オバマ大統領とトランプ次期大統領の狭間で揺らぐ日本防衛の在り方》

2014年上旬、オバマ米大統領は日本に実験用プルトニウム300kgの返還を要求した。日本の核開発を懸念する中共に気を遣っての同盟国に対するこの上ない無礼である。現状の日本のプルトニウム保有量は大陸間弾道核ミサイル(ICBM)を5万発まで製造可能な量だという。オバマ政権や中共が日本の核保有を懸念する所以は核大国である中共自身と実質的核保有国、北朝鮮の存在があるからだ。中共も米国も甚だ身勝手な国である。

オバマ政権は断固として日本に核の傘を機能させるつもりも無く、日本の核武装への道を閉ざしたのである。実験用プルトニウム返還要求は米国が信頼に足るとは言えない軍事同盟国である証しと言える。トランプ次期大統領になったとしても、〈米国に全幅の信頼を置く〉事は日本にとってこの上なく危険な事である。嘗ての英国の首相パーマストンは『我が英国にとって、永遠の同盟もなければ永遠の敵もない。あるのは唯一つ、永遠の英国の国益のみ』と語っている。これは恐らく真理である。

今、日本は中共と北朝鮮の絶え間ない挑発を受けている。また集団的自衛権の容認など日本も積極的平和主義を標榜しだした。短期的には日本の核兵器開発の可能性は極めて少ないが、長期的には中共と北朝鮮の存在が日本の戦略を変える可能性が無いとは言い切れない。だからオバマ大統領は実験用プルトニウムの返還を要求してきたのだ。

併し、日本は米国に返還した300kgを差し引いても、長崎級の原子爆弾を5000~7000発を製造する事ができるプルトニウム44tを保有している。ここに六ヶ所村の核燃料再処理工場が本格稼動すると、今後40年間、毎年8トンのプルトニウムを抽出する事ができる筈であった。「もんじゅ」の廃炉が決まった今はその可能性は無くなったが、保有プルトニウムの量に変わりはない。

オバマ大統領のプルトニウム返還要求は象徴的なものでしかない。それで特亜が安心するなら、それはそれで構わない。日本にとって問題なのは、米国が日本の核兵器開発に露骨な警戒感を示したという本質だ。トランプ次期米大統領が選挙期間中に「日本の核保有を許容する」としたが、選挙後の米国は日本には暗に核兵器の研究すら許さないとの意思表示をしている。ここは日本は鈍感になって大いに核保有の議論・研究をするといい。慌てて核保有に動く必要はない。学術的・政治的に核保有の議論や研究をする意義は大きい。

現実的には、先ずは核兵器の開発よりも、日本は〈核弾頭抜きのミサイル開発〉を進めるべきだろう。中距離ミサイル、巡航ミサイル、何れも日本は保有していない。自衛隊の敵地攻撃能力は無いも同然である。トランプ次期大統領が日本に応分の負担を求めるであろう中、〈自衛隊が防衛的敵地攻撃能力を備える事は必然〉であろう。中共は核ミサイルを何百発も日本各地に向けている。殆んどは米軍基地、自衛隊基地であろうが、大都市に照準を合わせていない保証はどこにもない。

2005年、中共国防大学院長、朱成虎 少将は恐るべき発言をした。「この十年以内に核攻撃で日本などを消滅させ、中共(漢民族)が世界人口の中で大きな比率を占め、人類の進化の過程で有利な位置を占めるようにする」国防大学防務学部の内部会議の講話だそうだ。(鳴霞 氏)。中共が今正に行なっているチベットや東トルキスタンでの民族浄化と通底する考えだ。こういう話を日本で報道しないのは、既に反日左翼の巣窟と化している日本のマスメディアの不文律となっている。

毛沢東は「持久戦」と言う言葉をよく使った。大人しくして、叩かれないようにしていれば、人口も資源も豊富な中共が最後には必ず勝つ。但し、核兵器開発だけは絶対に譲れない。広島、長崎で見せつけられた、凄まじい破壊力の核兵器を持たなければ、米国、旧ソ連には対抗できないと知っていたからだ。

そして今、習近平氏は以下の6項目に集約される「新 持久戦」と言う言葉を使った。

1)軍事力を強化し、挑発には断固とした有力な反撃をする
2)日本の誤った歴史修正主義に対し随時反撃。対外的に世論戦を強化し、戦後の国際秩序、及び連合国体制を守る
3)周辺国、及び国際的な「統一戦線」を構築し、日本を孤立させる。韓国・ロシアその他を味方につけ、日米離間を図る
4)経済力、金融力を増強し「中共市場」を経済カードとして巧く使う
5)海空軍の近代化を加速し、日本を抑制。尖閣諸島と海洋権益を守る
6)日本政府の誤った行動に対しては強く制裁を加える。同時に野党や民間に対しては友好的に働きかける
(新華社通信「瞭望」2014年1月14日号)

見事なまでの言行一致。日本にこれに対抗する戦略があるだろうか。何しろ日本政府は毎年中共に300億円以上の無償ODAを献上している。中共の国営通信社の記事を知ってか知らずか、内閣府は未だに中共に対して「戦略的互恵関係」などと言う聞こえの良い言葉を使う。「敵を欺くには先ず味方から」であってくれれば良いが、日本政府は中共に欺かれ利用されているとしか思えない。

斯様に尖閣盗りを明言する中共に対して、仮に尖閣諸島の局地戦で五分に戦えても、東京を火の海にすると恫喝された場合の抑止力を日本は持っていない。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新型固体燃料ロケット、イプシロンロケットは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)技術と同じで、日本がICBM開発にこの技術を転用する事は容易である。政治決断さえすれば良い。

オバマ大統領の米国が8年に亘り中共の思惑通りに経済依存を深めてきたなか、中共との小競り合いにすら米軍のサポート無しでは機能しない自衛隊の現実は、誠に心もとない。トランプ次期大統領の日米同盟下では、せめて海上自衛隊の然るべき艦船には、中距離ミサイルくらいは搭載するべきだし、日本国内には核弾頭無しの移動式ICBMを必要量配備するべきだ。更に、潜水艦からの発射実験くらいしておくべきだろう。核武装のハードルは高いが、非核ミサイルでの武装は、していない方が異常な状態である。

それすら〈米国政府とGHQに洗脳された日本国民〉に禁じられているという現実を、多くの日本国民は自覚していない。日本防衛は日米安全保障条約があるから、自衛隊は米軍の補完勢力であれば良い? 日米同盟下では自衛隊は米軍のシステムの一部に成り下がっているという事を理解し、単独では機能し得ないという現実を安倍政権は日本国民に解り易く説明するべきだろう。米国が日本の防衛出動を望まない場合は、米国の胸先三寸で容易に日本の防衛行動を妨害できるという事でもある。

例え自衛隊員の様な優秀な人材が命懸けで日本の防衛に臨む覚悟を持っていようとも、米国の許可なく日本は自国を防衛する事はできない今のままの体制で果たして良いのか。そして従来の米国は日本には永久に「軍事的独立」を許さないとしている。民主党も共和党も関係なく、1941年8月以来の米英が共有する不文律である。「瓶の蓋」は絶対に開けさせないという事だ。トランプ次期大統領がこの不文律を変更するという保証は何処にも無い。

日本国の「保護者、兼 管理人」の米国がどう言う思惑であろうとも、日本は米国抜きでも自国を護る防衛システムを備えるべきである。中・長距離のミサイルは配備して当然。今直ぐ進めるかどうかはともかく、日本は核武装についても常にフリーハンドを保持しておくべきだろう。否、決して手離してはいけない。遠からず核武装が必要になる時が来る。

中共との無駄な紛争や戦争を起こさない為にも、できるだけ米国と争わないで独自の高い防衛能力を日本は手に入れるべきである。米国とはいつまでも友好国であり続けたい。この真っ当な思いをトランプ次期大統領と米国支配層に理解させる事こそ、これからの日本の最優先外交課題である。これは物凄く難しい課題だ。

今までの米国は、とにかく中共と事を構えたくないという姿勢だった。日本が先に動かず、うかうかしていると「尖閣海域の日中共同開発」を「米国が提案」してくる可能性だって排除できない。そこまで想像力を巡らせる政治家が今の日本に居るだろうか。〈自主防衛の力を持たない選択とは、情勢の変化によってはそういう無理無体を受け容れざるを得ない事態を覚悟するという事である〉。米中結託による理不尽な外交提案を今の日本が断れるとはとても思えない。

トランプ次期大統領が言う通り〈日本が強くなる事〉は、米国にとって決して悪い話ではない筈だが、〈米国支配層あるいは米国民の大多数と今の日本国民にはなかなか理解して貰うのは難しい〉。一にも二にも忍耐強く、誠意を持って、米国と日本国民の理解を得る努力を続ける事だ。そしてそういう意見を撥ね付けられた時の備えを今からしておくべきだ。日米安保が有効と見られているうちに、中・長距離ミサイル開発に着手する事は大切である。同時に核兵器保持の議論や研究を始める事も肝要である。