《 安倍首相はプーチン大統領を甘く見てはいけない。今のままでは北方四島は返ってこない。一部が返還されても茨の道を進む覚悟が必要だ 》

12月15日にプーチン ロシア大統領が来日する。安倍首相は短期間のうちにプーチン大統領と15回も会談を重ね、マスメディアによると二人は随分と信頼関係を築き深めてきたという。その間、米国の新大統領にトランプ氏が選出されて、世界に激震が走った。日米同盟の位置付けも微妙に変化して、日本の防衛費負担増加への圧力は嫌が上にも高まってくるだろう。それはそれで構わない。米国に自国防衛を丸投げしていて平気でいられる平和呆け日本人がマトモに戻る好機かも知れない。

米選挙期間中、トランプ氏は防衛費を100%負担しない同盟国からは駐留米軍を撤退させると息巻いていた。流石に当面は在日米軍撤退は無いだろうが、次期米国大統領が中東と同様に東アジアに於ける米国のプレゼンスの重要性を軽視して見せた事は決して聞き流してはいけない変化である。本音は「米国の負担は減らすがプレゼンスだけは従来通り維持したい」という事だろうが、習近平氏がニンマリした事だけは間違い無い。何か紛争を起こしてももう米国はしゃしゃり出て来ないという事が手に取るように分かったからだ。

そんな国際環境の変化の真っ最中に、安倍首相がプーチン大統領を日本に招き、日露接近を決定的に匂わせた事は、偶然か意図したものかはともかく見事なものである。ロシアは中共牽制には適役であろう。米国も中共も固唾を飲んで見守る事は間違いない。

併し、日本国民は安倍・プーチン会談に甘い期待をしてはいけない。寧ろ、逆毛を立てるように、固唾を飲んで見守らなければならない。12月15日の安倍・プーチン会談には今後の日本の命運がかかっていると言っても過言ではない。プーチン氏には容易く北方領土を返還する気などは更々無いだろうからだ。

昨年10月30日に公開されたプーチン大統領の支持率は89.9%だという。驚異的な数字である。そのプーチン大統領と雖も、ロシア領土とされている北方領土返還には慎重にならざるを得ない背景がある。嘗て、橋本龍太郎政権の時代からプーチン氏は「戦後の現実を認めようとしない勢力」として〈北方領土の返還要求する勢力〉を〈悪〉と見做し続けてきた。そして、領土問題で融和的な空気が漂い出すとプリホチコ氏という官僚が出てくる。彼はロシアの国際関係大学卒で、この大学は、外交官・商社マン、そして諜報機関員を輩出してきた。プリホチコ氏は「領土を減らした国は大国に成れない」という固い信念の持ち主で、領土交渉で融和的になると必ず裏で暗躍して潰してきた人物である。

橋本政権の時、川奈でのエリツィン(当時)露大統領との会談で北方四島の返還に話が及ぶと、ヤストロジェムスキー氏という官僚が止めに入って話の進展を遮った。プリホチコ氏もヤストロジェムスキー氏も、ひと世代前の実力者ではあるが、彼らは今も隠然と発言力を持っている。そしてプーチン大統領の支持基盤の中心的人物でもある。89.9%の支持率を誇るプーチン大統領だが、支持者は間違い無く熱烈な愛国者たちである。国土の切り売りを支持する訳がない。12月15日が近づいてくるにつれプーチン大統領は「領土問題の解決は難しい」と慎重な発言を繰り返すようになった。領土返還はそれだけ困難であるという事だ。

併し、結論的に言えば〈条件付きで〉歯舞群島、色丹島の二島の返還は大いに有り得る。それに反して国後島、択捉島の返還は絶対に有り得ない。返還される可能性があるのは面積にして北方四島全体の僅か7%である。7%でも0%よりマシであるから、日本は歯舞群島、色丹島の二島返還でも受け容れるべきだろう。それにより世界的に良好な漁場も戻って来るのだから、ゼロ回答よりはずっとマシである。

併し、二島返還を受け容れるには、日本政府がプーチン大統領の真の目的を見抜き、それに応じた覚悟を決める事が絶対条件である。マスメディアは安倍・プーチン会談を〈北方領土〉と〈日本の経済と技術支援・エネルギー購入〉のバーターの如く解説をしているが、見当はずれも甚だしい。プーチン大統領の真の狙いは、日米間に楔(くさび)を打ち込み、東アジアでのロシアのプレゼンスを確固たるものにする事である。これを承知の上で日本は二島返還を受け容れ、ロシアと友好関係を結んで本当に良いのだろうか。私は二島返還の提示があれば迷う事なく受け容れるべきであると思う。

二島返還が実現した場合、ロシア側はその二島(歯舞群島・色丹島)に米軍基地ができる事は絶対に容認しないだろう。詰まり、返還される二島は〈日米安保条約の適用除外〉となるのである。プーチン大統領は二島の非軍事化を求めてくるだろう。日米安保条約 第5条には、「日本国の施政の下にある領域」での武力攻撃について、日本と米国が「共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と明記されている。これが米国が集団的自衛権を行使して、日本を防衛する義務を負う根拠になっている。

「日本国の施政の下にある領域」に〈例外を設ける事を日本が容認〉すれば、米国が「中共とは戦いたくないから尖閣諸島を第5条の適用から除外する」という事も可能にする。日米安保条約が在りながら、日本と中共の領土紛争が起きても米国は何もしなくて良いという事になる訳だ。安倍首相は、それだけの危険を冒して、返還される領土の非軍事化を受け容れるだろうか? これは中共にしてみれば正に〈思う壺〉である。

海上自衛隊の実力では、尖閣諸島海域に於いて米軍と共同であれば人民解放軍を追い払う、或いは殲滅する事はできるが、自衛隊単独では長年に亘って尖閣諸島を護り抜く能力は無い。装備も、システムも、法整備も、日本には単独で国土を護り抜く能力が無い。仮に、北方領土の一部が取り戻せるとしても、12月15日までに日本が自主防衛できる能力を獲得するのは無理である。安倍首相は、プーチン大統領との領土交渉で成果を挙げたら、速やかにトランプ(新)大統領と会談して、自衛隊の装備と、システムと、法整備が実力を保有するまで、尖閣諸島への日米安保条約適用を懇願する必要に迫られる。

ロシアが盗み取った我が国の領土は、北方四島だけでは無い。国益というものを真剣に考える能力に欠ける外務省の見解に関わらず、南樺太・占守島(しゅむしゅとう)から得撫島(うるっぷとう)に至る千島列島も勿論、日本の領土である。サンフランシスコ講和條約で日本は〈南樺太・千島列島・北方四島〉を放棄させられたが、サンフランシスコ講和会議には旧ソ連は参加して居ない。従って、『北方領土』と言った場合、本来〈南樺太・千島列島・北方四島〉の事なのである。

然るに日本政府・歴代自民党政権は北方四島のみを我が国固有の領土と言い続けてきた。旧ソ連が敗戦後に武装解除して抵抗できない日本から暴力的に盗み取った本来の『日本の領土』は、何れ全て取り戻さなければならない。今後何世代かかろうとも、不当に外国に盗み取られた『日本の領土』は、必ず取り戻さなければならない。大東亜戦争で散華された英霊や多くの罪無き一般の犠牲者、そして我々の子々孫々の為に『日本の領土』奪還は譲れない一線である。

NHKも日本の公共放送を名乗るなら、『尖閣諸島、竹島、そして本来の北方領土』の気象予報ぐらい日本全国にとどまらず海外にも発信したらいい。その前に、内閣府・外務省のホームページを改正するべきだ。何につけても日本人は遣り方がお上品過ぎる。気象予報はやり過ぎとしても、公式の地図に国家意思を反映させるのは当然である。我が国固有の領土を公式地図で白面にしておくとは何事か! 正式に日本名で表示し、相手国には好きなだけ反論させておけば良い。国家間の領土紛争とはそんなものだ。問題があれば、それを恣意的に顕在化させる事は当然である。