《 米国は日本にとって必要欠くべからざる同盟国であるが、自国防衛を丸投げするほど信じ過ぎてはいけない 》

親米一辺倒の保守派の人々に果たして日本の未来は見えていたのだろうか。確かに今の日本にとっては、米国の軍事的庇護を失う事は悪夢である。併し、東西冷戦構造が崩壊し、米国の一局支配の夢が破れた以上、日本は米国にとってお荷物の度合いを増している事は分かっているだろうに。今の米国は、日韓の不和や日中の紛争沙汰にビクビクしている。

東西冷戦時代は日本は米国の不沈空母として最重要視された。日本が見返りに得たものは、米国という巨大市場であった。繊維、自動車、と数々の貿易摩擦を起こしながらも、米国市場からの甘い汁で日本は経済的に大いに発展してきた。併し、1991年12月25日のソ連崩壊の後は、そう単純な図式ではなくなってきた。米国は片務的な日米安保条約に不平を言いながら、逆の意味で片務的な…日本だけに米国の都合に合わせて改革(経済システムの改悪)を求める「年次改革要望書」という形で、与える米国から奪う米国へと変容したのは、ソ連邦崩壊の数年後からである。

台頭著しい中共への睨みを効かせる為に、日本と在日駐留米軍には新たな役割が課せられた。併し、超大国米国の一局支配の夢は既に脆くも崩れ去っていた。必要以上に弱腰をさらけ出す米国を見て、思い上がった覇権主義国 中共は、米国が護ると約束している尖閣諸島を、お得意の侵略宣言である〈核心的利益〉と言い出し、更に、国際法無視の中共型防空識別圏まで設定した。また、世界地図を広げれば誰が見ても筋の通らない〈南支那海全域〉を中共の領海と言い出し、国際社会を呆れさせたが、自国の損得に関係が薄い欧米は口だけで避難して、余命幾許(いくばく)も無い中共経済に目を眩ませている。

2013年9月のオバマ大統領による世界の警察官辞任表明は、外交下手なオバマ氏の大失態であった。軍事的多方面作戦は米国には既にできない事は周知の事実であったが、米国大統領がわざわざ口にする事ではない。外交には時に虚勢も必要である。実力の衰えた猿山のボスも威張っているうちはボスの対面を暫くは保てる。併し、弱味を見せた途端に挑戦者が現れ、ボスの座を追われる。オバマ氏はそれをやった。

米国は政府も財界も国民も、中共と戦う気など更々ない。日本に日米安保を当てにされ、中共と角突き合わせられるのはただの迷惑でしかない。2016年時点で中共は米国の総株式の38%を保有し、1兆2600億ドルの国債を握り、毎年数百億ドルの国債を買い増し、今年の自動車販売台数は2600万台(昨年同期比6%増)を超える。このような中共とは、米国は絶対に本格的に事を構えない。日本はこの現実を確と自覚すべきである。

米国に相談などしたら、護ってくれると言うに決まっているが、米国は実に「簡単に約束を破る国」である。今を遡る事117年前、米国という国を表す象徴的な出来事があった。W・マッキンリー、T・ルーズベルト両政権で国務長官を務めたジョン・M・ヘイは、ロシアやヨーロッパ列強に対して、支那に対して実に立派な三原則の適用を迫った。

1899年の「ヘイの三原則」とは即ち、支那に対する
1)門戸開放
2)機会均等
3)領土保全
…である。

米国は他の列強とは異なり、支那を喰い物にはしない「道徳的に優越した国である」と米国民は胸を張った。併し、本質的に不道徳的な米国は、その前年の1898年に米西戦争を始めていた。フィリピン人の独立革命家のアギナルドやリカルテに対し、米国はスペイン撃退後のフィリピン独立を約束して彼等の協力を取り付けた。

アギナルドらは独立を助けてくれるものと信じて米軍に大いに協力した。ところが米国は地元の革命軍の協力でスペインを駆逐すると、フィリピン独立の約束をあっさり反故にし、フィリピン併合を宣言した。騙されたと知った革命家は、日本に援助を求めながら、米国に抵抗し悲劇的戦争となったが、結局は米軍に鎮圧された。その時の日本には米国と戦う力も野心もなかった。

この時、米国は60万人のフィリピン人を殺戮したと言われている。支那に対しては、たいそう道徳的な「ヘイの三原則」を謳いながら、同時期にフィリピン人を騙し、無辜の民を大殺戮していたのだ。フィリピンが独立を宣言できるのは大東亜戦争中の1943年の事である。米国は半世紀近くもフィリピンの植民地支配を続けた。ドゥテルテ現フィリピン大統領が反米なのも尤もである。これが米国の正義なのである。国際社会で綺麗事は通用しないと口では言うが、ここまで汚い裏切りには、躊躇う国もあるだろう。

米ソ冷戦時代、米国の一局支配時代を経て、今の日本には、米国にとって犠牲を払ってでも護るに足る、どれほどのものがあるだろうか。親米保守と呼ばれる人々は、トランプ新大統領が誕生しても日米安全保障条約に絶大な信頼を置くのだろうか。アメリカ・ファーストを殊更唱え続けるトランプ政権下でも、従来通り米国について行けば日本の安全は保障されると信じていいのか。日米安全保障条約は維持されるだろうが、外交関係に於いて最悪の事態に備える事まで否定してはいけない。

日本の進むべき道は最低限の「独立自尊」への道のみである。防衛的敵地攻撃能力を備えた自主防衛、そして核武装への選択肢も残しておきたい。その上で、インド、東南アジア諸国との有効・同盟を進めてこそ、日本の安全保障は安泰となる。友好国・同盟国は多いほど良い。米国が許す限り日米安全保障条約は日本から破棄してはいけない。どの国と争う事も無く、日本国の国際的地位を盤石なものにしなければならない。