《「北方四島は日本領」との米国務省報告を無視して、ルーズベルトは日本の領土をスターリンに与えた。》

トルーマン米大統領は、東京を始めとした都市部大空襲・原子爆弾実験投下という人類史的な非人道的攻撃を平然と命じた狂人である。その狂人トルーマンの前任者である、これまた狂人ルーズベルト米大統領が〈南樺太を始めとした千島列島・北方四島をソ連に引き渡す密約〉を餌に、〈ソ連の裏切り参戦〉を唆した事実を日本人は決して忘れてはいけない。〈日本の北方領土〉と言った場合、正確には〈南樺太・千島列島・北方四島〉を指す事を日本人は忘れている。

ルーズベルトの形振り構わぬ〈日本人絶滅願望〉が、ソ連軍の数々の蛮行を引き出した。〈降伏して武装解除した本来帰国できる筈の日本軍将兵60万人のシベリア抑留、満州に居た120万人の非戦闘員である女性・子供・老人・病人への強姦殺戮、悲劇的な真岡郵便電信局事件〉… 語り継がれる数々の惨劇は、直接的には野蛮な旧ソ連軍の行為であるが、そのきっかけは狂人ルーズベルトが唆したものなのである。

最悪な事に、第二の狂人トルーマンは自国がソ連参戦を画策しておきながら、原子爆弾が完成すると、ソ連参戦の前に何としても2種類の原子爆弾を実戦で実験しようと、闇雲に日本への原爆投下を急がせた。科学者たちの「実戦使用ではなく、無人島でのデモンストレーションで充分、原爆の恐ろしさは伝わる」という制止の声は狂人トルーマンの耳には届かなかった。

こうした日本の悲劇的な敗戦から71年が経過した。旧ソ連邦は崩壊したが、〈旧ソ連が火事場泥棒の如く日本から掠め取った〉「北方領土」は、旧ソ連邦が遺した数々の負の遺産と共にロシア連邦が引き継いだ。

ソチ五輪直前の日露次官級協議でロシア側は「北方四島は第二次大戦の結果、ロシア領になった」との従来の主張を繰り返した。ロシアが北方四島領有を正統化する根拠としてきたのが1945年2月の「ヤルタ会談」で交わされた「ヤルタ密約」だ。〈ヤルタ会談直前に米国務省は「北方四島は日本が保持すべきだ」との報告書を作成〉している。

併し、日本人への憎しみを募らせるルーズベルト米大統領は国務省の報告書には目を通さず、事前に裏からそれを入手したスターリン ソ連首相が熟読し、〈ルーズベルトが国務省の進言を無視したのをいい事に、巧みに北方領土を奪った〉という経緯(いきさつ)を日本人は肝に銘じておくべきである。

ヤルタ会談とは、1945年(昭和20年)2月4日から11日、ルーズベルト米大統領、チャーチル英首相、スターリンソ連首相がソ連領クリミア半島のヤルタで会談し、ルーズベルトは、スターリンに「日ソ中立条約」を〈破棄〉してドイツ降伏3箇月後に対日参戦するよう要請。見返りとして、〈北方四島を含む千島列島、南樺太〉、満州(支那東北部)に日本が有した旅順港や南満洲鉄道などをソ連に与える密約を交わした。ソ連は密約を根拠に、終戦間際の8月9日、満州、千島列島、樺太に侵攻し、北方四島を占領した。

併し、密約は飽くまでも密約であり、国際法が認めるものではない。寧ろ国際法違反である。従って何の拘束力もない。プーチン大統領のロシアの北方領土領有の根拠には法的正統性は全く無い。

国務省はクラーク大学のブレイクスリー教授に委嘱して千島列島を調査し、1944年(昭和19年)12月に『南千島(歯舞、色丹、国後、択捉の4島)は地理的近接性、経済的必要性、歴史的領土保有の観点から日本が保持すべきだ』との極秘報告書を作成、ヤルタ会談前にルーズベルト大統領とステティニアス国務長官に手渡された。

ワシントン・ポスト紙の元モスクワ支局長、マイケル・ドブズ氏が上梓した近著『ヤルタからヒロシマへ』によると、スターリンは「盗聴報告の他、スパイが齎した米国の説明文書も目にする事ができた。共産主義の崩壊後、彼の個人ファイルには千島列島のソ連への割譲に反対する1944年(昭和19年)12月の米国務省作成の内部文書が含まれている事が分かった。

簡単に言うと〈反日家のルーズベルトは日本に有利な専門家の報告を読まなかったが、狡猾なスターリンは密かに入手して貪り読んでいた〉のである。そして〈ルーズベルトが国務省の助言に従わない事を大いに喜んだ〉のだ。

スターリンは、諜報を駆使してルーズベルトの反日傾向を見透かして、南樺太と共に「北方四島も日露戦争で奪われた」とルーズベルトを欺いたのである。

米軍は日本本土上陸作戦(ダウンフォール作戦)になると、日本軍の抵抗で50万人(この数字はいつの間にか100万人に摩り替わっている)の兵士が犠牲になると推定しており、「背後」からソ連の参戦を望んだ。この当時は原爆はまだ完成していなかった為である。

米国は1941年(昭和16年)4月、モスクワで「日ソ中立条約」を締結した際、スターリンが松岡洋右外相に「条約締結の見返りに千島列島の譲渡」を要求した、との日本の外交電報を傍受、解読していた。

米国は北方四島を含む千島列島に領土的野心を燃やすスターリンの歓心を買おうとしたともいえる。ソ連に大きく譲歩する合意に再考を促したハリマン駐ソ大使に対し、ルーズベルトは「ロシアが対日戦の助っ人になってくれる大きな利益に比べれば、千島は小さな問題だ」と進言を退けたという。

ルーズベルトの周辺で暗躍したのがソ連のスパイたちだった。ルーズベルト政権には200人を超すソ連のスパイや工作員が侵入していた事が米国家安全保障局(NSA)の前身がソ連の暗号を傍受・解読した『ヴェノナ文書』で判明している。

側近としてヤルタに同行したアルジャー・ヒスもその一人で、ソ連の軍参謀本部情報総局(GRU)のエージェントだった。

ステティニアス国務長官の首席顧問としてヤルタに随行したヒスは、国務省を代表して殆んどの会合に出席した。会談19日前、米国の立場に関する全ての最高機密ファイルと文書を与えられ、ヤルタ協定の草案も作成している。〈そこで北方四島を含む千島列島引き渡しのアウトラインを描いた可能性が高い〉。〈ルーズベルトが国務省文書を一顧だにせず北方領土を引き渡した背景にスターリンの意を汲んだヒスの働きがあった〉といえる。

そもそも〈ヤルタ密約は軍事協定に過ぎず、国際法としての正統性はない〉。更に、〈『当事国が関与しない領土の移転は無効』という国際法にも違反〉しており、当事国だった米国さえも法的根拠を与えていない。共和党アイゼンハワー政権は1956年(昭和31年)、ヤルタ秘密議定書は、『ルーズベルト個人の文章であり、米国政府の公式文書ではなく無効」との国務省声明を発表。2005年にはブッシュ大統領が「史上最大の過ちの一つ』と批判している。

ロシア南部のソチで開催された日露首脳会談では、北方領土問題の原点ともいえる「ヤルタ密約」が国際法上 違法な国境画定である事は話題に上らなかった。日本側にこれを問題視し、取り上げる認識が無い限り期待はできない。領土交渉での歴史の正義は無視されるだろう。

「北方四島」だけに拘り続ける日本の外交姿勢は一貫して間違っている。【領土の帰属交渉は、占守島(しゅむしゅとう)から得撫島(うるっぷとう)に至る千島列島・南樺太をも含めるべき】だし、旧ソ連軍の数々の蛮行に対するプーチン大統領の見解も質すべきである。日本は賠償金などは請求する必要はない。併し、旧ソ連邦を引き継いだプーチン大統領の歴史観を確認しておく事は重要である。プーチン大統領とて旧ソ連に都合の良い歴史教育で育ったであろうから、日本側からの言い分は容易に受け容れられないだろうが、日本側の歴史観を理解して貰う事はこの上無く重要な事である。

来たる12月15日に、北方領土問題が全て解決するなどとの期待はしていないが、一貫して日本政府が避けてきた真っ新(さら)な状態からの「歴史の正義」を〈心の芯棒〉に据えて交渉に当たる行為は、今後の日本外交にとって決して無駄にはならないと信じる。誤解しないでいただきたいのは〈心の芯棒〉を曝け出せと言っているのではない。交渉ごとの場で相手を窮地に追い込むような事をしては台無しであろう。犠牲になられた無辜の国民の無念を背負って、信念を持って交渉に当たって欲しいという事である。

安倍首相には〈毅然たる交渉態度〉が求められ、日本国民には〈長期戦〉となる覚悟が求められる。「12月15日が最後のチャンスである」などとの論説に惑わされてはいけない。〈最後のチャンス〉だとのアナウンスは、どのような結果に終わろうとも「今回の交渉結果を受け容れよ」という諦観論である。プーチン大統領との交渉では、諦めたり落とし所を求めたりしてはいけない。例え長期戦になろうとも日本国民が諦めない限りチャンスは何度でもつくる事ができるのだから。