《自主防衛と多国間軍事同盟による米国一辺倒の安全保障からの脱却こそ、これからの主権国家日本の生きる道》


今の米国を友情に厚い真の同盟国と、何の疑いもなく信じて疑わないのは、日本国にとって楽ではあろうが非常に危険な考えである。何も今後の日本は米国に盾突いて行くのが良いなどと言っているのではない。米国とは今後も良好な関係を維持していかなければならない。膨張を続ける敵対国、中共を近隣に持つ日本としては、形骸化している恐れが強いとは言え「日米安全保障条約」は未だ縋(すが)るに値する唯一の条約であり続ける。


併し、日本列島全域はおろか、米国人にとっては、たかが無人島である尖閣諸島防衛の為に、米国の若者が血を流してくれるなどと、日米安保に過剰な信頼をおいてはいけない。後方支援くらいはしてくれようが最前線で身体を張って闘うのは当然の事ながら自衛隊である。「核の傘」が機能すると信じるのも愚かな事である。日本のどの都市が核攻撃されようとも、米国が自国に報復される危険を冒してまで、日本への核攻撃に核を以って反撃してくれる事などあり得ない。


米国務省、CIAIMFの裏評価では、中共の経済規模はとうに米国に並んでいるという。鉄鋼の消費量だけを見ても中共は世界の48%以上を占めている。表の発表を額面通り信じてはいけないが、米国債の中共の買い上げ総額が12千億ドルを優に超えている事は紛れも無い事実である。米中二大国は経済的に最早(もはや)決して諍(いさか)いを起こせない構造で繋がっている。何年も前から中共経済は既に崩壊しているとか、中国共産党はもう持たないとか、中共崩壊を予言する書籍が多く出回っているが、国というものはそう簡単には潰れない。


米国が日本の為に中共と諍いを起こす事など有り得ないと言う事を、親米保守は真摯に受け止めるべきである。「日本の安全は日米安保に頼れば維持できる」という考えは、好都合な願望に過ぎない。外交の力学がほんの少し狂うだけで、日本は「米国と中共を同時に敵に回す」事態もあり得るという想像力を働かせる事は決して不必要ではない。トランプ政権が誕生した今、米中露の三大軍事大国の力関係の不透明さは益々混迷を深めるだろう。


トランプ新大統領が選挙期間中に公言していたように、米国が中共と過剰に敵対する事も、ロシアと急激に友好関係を深める事も、そう簡単には成し得ないだろう。米国に頼る日本は暫くはトランプ新大統領の言動から目を離せない。日本を含む国際社会の国々はアメリカファースト政策により、ある程度の経済的損出を被る事を余儀なくされ、一定期間は米国経済の一人勝ち状態が続く事も予想できる。併し、そんな不公平な状態が恒常化する事は難しいだろう。米国の一時的な好景気が揺り戻しに悩まされる可能性は充分に想像できる。


中共の覇権的冒険主義、米国の身勝手な無責任行動が日本の安全保障を揺るがす可能性がある以上、日本はそれに備えなければならない。それが「自主防衛」の完結である。言い換えれば「日本の核武装」である。これは二度と我が国が他国に蹂躙されない為には避けて通れない唯一の道である。そして尚、複数の国々と軍事同盟を結んで、初めてこれからの国際社会での日本の平和は担保される。右傾化などでは断じて無い。平和呆け反日左翼が念仏のように唱える奴隷の平和とは全く異なる、「能動的平和主義」を貫くしか日本の生きる道はないのだから。


日本の自主防衛に対しては、米国が許容する可能性は極めて悲観的である。親日家と信じられてきたオバマ時代の米国の発言力のある識者の殆んどは、日本が自主防衛できる国になる事には明確に反対していた。R・アーミテージ、M・グリーン、J・ナイ、K・メア皆、知日派にして親日家と思われている。


併し、彼等は一貫して日本の自主防衛には反対である。核武装など以ての外。将来、米国がアジアから完全撤退しようとも、日本の自主防衛だけは容認しない。もう一度言う。日本から米軍基地が完全撤退しようとも、日本には自主防衛を許さないと言うのだ。彼らにとって日本など米国に楯突かなければどうなっても良い。日本が将来的に中共に侵略される可能性があろうとも、日本に自主防衛できる軍事力を持たせるのは危険だと考えているのだ。親日家どころか日本国の将来などどうなっても良いのである。


朝鮮戦争、ベトナム戦争の時は日本の利用価値は高かった。東西冷戦時代は日本は米国にとって非常に価値ある「反共の砦」であった。1991月のソ連邦崩壊の後は、北朝鮮を牽制するアジアの要衝という名目でも、中共を睨む上でも、まだ日本には利用価値があった。併し、結局オバマ氏の米国は北朝鮮の核保有を黙認し、中共と深く結び付いた今、日本の防衛価値は激減した。否、中共、韓国の理不尽に楯突く日本は、オバマ氏の米国にとっては寧ろ厄介者のお荷物であった。


今にして思えば「瓶の蓋論」が米国の真意であった事が良く分かる。日英同盟破棄を働きかけ、19418月(大東亜戦争開戦の4箇月前)にルーズベルトがチャーチルと「日本を永久に軍事的独立国にしない」とした密約は、今も厳然と生きている。トランプ新大統領が国際政治に無知だとしても、米国支配層の心に秘めた基本姿勢は変わらないだろう。トランプ新大統領の下では、東アジアに於ける米国の派遣を維持する為に、米国の子分としての日本は軍事力強化を求められるだろうが、結局は米軍の補完勢力としてのみ日本の軍事力強化は認められる。厳密に言えば日本の為の軍事力強化に対しては米国は警戒を緩めないだろう。


併し、米国はこういう反日思想で100%凝り固まっている訳ではない。少数派だが、中共を牽制し米国のブレゼンス後退を喰い止める為に、同盟国日本に核武装させようと言う識者もいる。かなりご高齢だが、Z・ブレジンスキー元国家安全保障問題担当大統領補佐官、K・ウォルツ博士、J・ミアシャイマー教授らである。「文明の衝突」で有名な大物親日家、SP・ハンティントン教授が故人となられたのが惜しまれる。


従来から米国の指導的立場にある「政治家、財界人、学者、識者、政権交代の度に代わる大勢の役人たち」を「反日主義者と非反日主義者」に分けると、おおよそ91になるという。日本にとっては非常に悲観的な比率である。この日本にとって苦しい傾向は、民主党、共和党の別無く、また、大統領が誰になろうと変わらない、構造的なものである。勿論、型破りなトランプ新大統領になってもこの構造は変わらないだろう。


多くの日本人が信頼する米国という国は、日本を「真の独立国家」にしかねない政治家が現れる事を警戒し不快感を顕(あらわ)にしてきた。嘗ての安倍晋三首相(今の安倍首相ではない)や、これも今は姿を消してしまった田母神俊雄氏、若かりし頃の石原慎太郎氏などである。2030年頃には米国と中共の軍事的パワーバランスは拮抗する可能性がある。日本はどのような妨害に遭おうとも、米国一国の力に頼らずとも自国を護る事ができる国にならねばならない。これは日本を愛する日本人全員の使命である。