《 真の独立国として自主防衛できる国になる事こそ日本の生きる道 》


R・アーミテージ氏とJ・ナイ氏は、知日派だが反日家である事は、常々指摘し続けてきた。トランプ新政権に対する彼等の影響力は分からないが、オバマ政権時代よりはかなり彼等の発言力は後退するだろう事は予想できる。併し、彼等が嘗て日本に要求した理不尽な事柄が全く無かった事として済まされるものではない。


3年ほど前、日本政府に対して、J・ナイ氏は、「河野談話は温存せよ(慰安婦問題で汚名は雪ぐな)と言い。靖國参拝はやめて別の国立追悼施設をつくるよう〈助言してくれた〉。R・アーミテージ氏に至っては、「日本は韓国に100年以上謝罪し続けても充分ではない」とまで言い放った。米国がアフリカ系アメリカ人に現在も謝罪し続けているからだという。


R・アーミテージ氏の「白人による黒人奴隷強制連行と、ありもしない慰安婦強制連行を同列に置いた、日本悪玉論は、無知か、それよりタチの悪い悪意を感じざるを得ない。アーミテージ氏と米国政府がどれほどアフリカ系米国人に謝罪し続けているのかは知らないが、米国人は謝罪では済まされない事をしてきたのは紛れも無い史実である。


アメリカインディアンを残虐な方法でほぼ殲滅し、アフリカ大陸から罪なき人々を人間狩りして強制連行し、奴隷売買と奴隷使役で米国が富を増やしてきた史実は消し去る事はできない史実であるし、アーミテージ氏が少年時代にはアフリカ系米国人には公民権すら与えられていなかった筈だ。そして現在も過酷な歴史的被害者である彼等を米国の白人社会が差別し続けている事は事実である。それと日本がどう関係があるというのかと問い質したい。


米国の白人たちが本音のところでずっと持ち続けてきた人種偏見は、トランプ政権の誕生で一気に顕在化しているではないか。米国の白人に日韓間の問題を一方的に日本に責任があるかの如く上から目線で諭される謂れはない。


トランプ大統領は選挙期間中、日本と韓国に対して核武装を容認するような発言をしたが、J・ボルトン元国務次官なども嘗て同様の発言をした事がある。両者とも日本とは言わず「日韓」と言い、〈日本を韓国と同列に置いた〉上で、核武装容認を仄めかすなど、非現実的なリップサービスとしか思えない。


J・ナイ氏に至っては、冤罪を晴らさないのが日本の為と言い、語るに落ちた韓国と、対北朝鮮で共闘を組めと言う。その必要性は理解するが、日韓の争い、否、韓国人の反日感情を煽り立て、日本に〈在日という癌〉を植え付けて行ったのは誰あろう米国ではないか。米国の知日派とは所詮こんなものである。


未だ閣僚人事が完全に固まらないトランプ政権だが、知日派として期待される人も既に何人か決まっているようだ。商務長官のウィルバー・ロス氏は知日派のビジネスマンと言われているし、投資金融会社創業者で米駐日大使となったウィリアム・ハガーティー氏も知日派と言われている。安全保障問題を担当する国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長のマット・ポッティンジャー氏も知日派だ。併し、この三氏が親日家かどうかは分からない。


今までの言動を観察する限り、米国を、心を許せる友人のような同盟国と信じるのは、日本国にとっては非常に危険な思想である。何も今後の日本は米国に盾突いて行くのが良いなどと言っているのではない。膨張を続ける反日覇権国家、中共を近隣に持つ日本としては、形骸化したとは言え「日米安全保障条約」は未だ縋(すが)るに値する条約である。併し、我が国の命運が懸かっている以上、日米同盟の賞味期限は冷徹に見極めておく必要がある。


日本列島全域はおろか、米国にしてみれば たかが無人島である尖閣諸島防衛の為に、米国の若者が血を流してくれるなどと、日米安保への過剰な期待は禁物だ。「核の傘」が機能すると信じるのも愚かな事である。日本のどの都市が核攻撃されようと、米国が自国に報復される危険を冒してまで、日本への核攻撃に核を以って反撃してくれる事など絶対にあり得ない。この事は日本を護る使命を負った日本政府は差し迫った現実の問題として体感しておくべきだろう。


米国務省、CIA、IMFの裏評価では、中共の経済規模はとうに米国を超えているという。鉄鋼の消費量だけを見ても中共は世界の48%以上を占めている。表の発表を額面通り信じてはいけないが…。また、米国債の中共の買い上げ総額は1兆3千億ドルを優に超えていた時期があった事も事実である。中共は現在の米ドル保有残高を明らかにしていないが、米中二大国は経済的にも決して諍(いさか)いを起こせない構造で繋がっているのは確かだ。


これは、日本の為に、米国は中共とは争いを起こせないと言う現実である。米国に着いて行けば「日本の安全は維持できる」という考えは、好都合な願望に過ぎない。外交の力学がほんの少し狂うだけで、日本は「米国と中共を同時に敵に回す」事態もあり得る。


可能性がある以上、日本はそれに備えなければならない。それが「自主防衛」の完結である「日本の核武装」である。これは二度と我が国が他国に蹂躙されない為には避けて通れない唯一の道である。そして尚、複数の国々と軍事同盟を結んで、初めてこれからの国際社会での日本の平和は担保される。右傾化思想などでは断じて無い。


日本の自主防衛に対しては、米国が許容する可能性は極めて悲観的である。親日家と信じられてきた米国の指導的識者の殆んどは、日本が自主防衛できる国になる事には明確に反対している。R・アーミテージ氏、M・グリーン氏、J・ナイ氏、K・メア氏…皆、知日派にして親日家と思われていた人物である。数々の発言を繋ぎ合わせると、彼等は皆こてこての〈反日家〉である事が分かる。


彼等は一貫して日本の自主防衛には反対である。核武装など以ての外。トランプ政権下の知日派たちにも過剰な期待は禁物である。将来、米国がアジアから完全撤退しようとも、日本の自主防衛だけは容認しないと米国の多くの知識人が証言している。日本から米軍基地が完全撤退しようとも、日本には自主防衛を許さないと言うのが米国の本音なのである。


安倍首相がトランプ大統領に胡麻を擦っているように見受けられるが、それが日本の国益に資するならどんどん胡麻を擦れば良い。だが現実からは目を逸らさないで欲しい。


朝鮮戦争、ベトナム戦争の時は日本の利用価値は高かった。東西冷戦時代は日本は米国にとって非常に価値ある「反共の砦」であった。1991年12月、ソ連邦崩壊の後は、北朝鮮を牽制するアジアの要衝という名目で中共を睨む上で、まだ日本にも価値はあった。併し、結局、北朝鮮の核保有を黙認し、中共と深く結び付いた今、日本防衛の価値は激減した。寧ろ、中共・韓国の理不尽に楯突く日本は、米国にとって単なるお荷物と化したと言ってもいい。


それでも、現実の〈米国の実力では事実上不可能〉な「ヨーロッパ・中東・東アジア」三地域の覇権を1945年当時と同様に維持したいという〈米国の願望が中共によって打ち砕かれる〉前までは、在日駐留米軍の価値は米国にとって高いだろう。日本は〈米軍が半永久的に日本に駐留し続ける〉前提で、国家運営を進めてきた。日本の防衛装備は盾鉾の「盾」としての米軍の存在が大前提で構築されている。


併し、日米安保条約の賞味期限切れは着実に迫ってきている。「鉾」だけで取り残される将来に備えなければならない現実を直視しなければ日本の未来は無い。


今にして思えば「瓶の蓋論」が米国の真意であった事が良く分かる。日英同盟破棄を働きかけ、1941年8月(大東亜戦争開戦の4箇月前)にF・ルーズベルトがW・チャーチルと「日本を永久に軍事的独立国にしない」とした密約は、今も厳然と生きているのだ。


米国の指導的立場にある「政治家、財界人、学者、識者、政権毎に代わる役人たち」を「反日主義者と非反日主義者」に分けると、おおよそ9対1になるという(国際政治アナリスト 伊藤貫氏)。日本にとっては非常に悲観的な比率である。この日本にとって苦しい傾向は、民主党、共和党の別無く、また、大統領が誰になろうと変わらない構造的なものであるという。


嘗ての石原慎太郎氏、田母神俊雄氏、そして首相就任当時の安倍晋三氏は米政権には非常に疎まれていたという。理由は日本を「真の独立国家」にしかねない政治家だからという。2020年過ぎには米国と中共のパワーバランスの逆転が露呈してしまう可能性がある。日本はどのような妨害に遭おうとも、米国の力のみに頼らずとも自国を護る事ができる国にならねばならない。これは日本を愛する日本国民全員に課せられた使命である。